ソーシャルメディア分析でみる商業施設の現状(前編)

首都圏では、2017年4月の銀座シックスのオープン、2018年3月の東京ミッドタウン日比谷のオープンなど、ショッピングモール型の商業施設は賑わいをみせています。また、小売業全体に目を向けるとネット通販型のサービスの台頭も際立っています。一方、かつては小売りの花形でもあったデパートは、ショッピングモールが併設された複合型の店舗が増加するなど、単一店舗での運営は衰退傾向にあるようです。それぞれの業態を利用者はどのように評価しているのでしょうか?利用者の生の声が集積したメディアであるSNS(twitter、Instagram)上のデータを用いて、ショッピングモール/デパート・盛衰の要因を探ってみたいと思います。対象にするのは、2016年度百貨店売上高1位の伊勢丹新宿と同2位の阪急梅田、2016年度駅ビル売上高1位のルミネ新宿と同2位の東京ソラマチです。(私にとって身近なデパートと駅ビル型を選びました。)分析に用いるSNSデータの選定は、調査対象によって特性を踏まえる必要があるため、本ブログは前編・後編に分けさせていただき、今回(前編)は、「twitterとInstagramのどちらが分析に適しているか?」を、伊勢丹新宿の今春のデータ(2018年3月)を用いて検証・考察します。

twitterではポジティブ/ネガティブ比率が2:1

まず初めに、ツールを用いてtwitterで「伊勢丹」 「新宿」の両方のワードが含まれた投稿を収集します。その結果、両ワードを含む投稿は1ヵ月間で58,577件ありました。全投稿数は多いですが、この中には単純に、他人の投稿や広告をRTしているものも含まれています。本分析では、伊勢丹新宿に来店したお客様や施策として開催されるイベントへの個人の感想・意見を重視して分析すると各商業施設間での差異が発見できるのではないかと考えたため、個人の意見や感想、体験が書かれていない投稿は、データから取り除きます。その結果、4,109件の投稿を分析対象としました。その中からランダムに100件抽出し、投稿の言及対象を以下の7項目に分類しました。

グラフ:twitterの投稿分類 ※n=100

〇商品に関するもの
・限定商品
・食料品(デパ地下)
〇施設に関するもの
・施設全般、デパート
・個別テナント
・施設の内装、設備
〇施策に関するもの
・イベント
〇その他
・その他

さらに、言及内容が肯定的であるものと、否定的であるものをカウントしました。
その結果、肯定的(ポジティブ)な投稿は16件、否定的(ネガティブ)な投稿は8件でした。

Instagramではネガティブな投稿がほとんど見られず

データを抽出する際に、#新宿伊勢丹 #伊勢丹新宿 #伊勢丹新宿店 #伊勢丹新宿本店の4つのワードを用いました。
Instagramで上記の4つのハッシュタグのうち最低でもどれか一つ含む投稿は、4,760件でした。Instagramの性質上、個人が投稿する場合には自分の体験に関連した写真が多いため、広告・告知以外の投稿は基本的に全て有効なデータとして残しました。本分析は広告・告知を除いたランダムな100件に対してtwitterと同様に分類を行いました。

グラフ:Instagramの投稿分類 ※n=100

〇商品に関するもの
・限定商品
・食料品(デパ地下)
〇施設に関するもの
・施設全般、デパート
・個別テナント
・施設の内装、設備
〇施策に関するもの
・イベント
〇その他
・その他

さらに、twitterと同様に言及内容が肯定的であるものと、否定的であるものをカウントしたところ、肯定的(ポジティブ)な投稿は18件、否定的(ネガティブ)な投稿はありませんでした。

商業施設施策の比較にはtwitter分析がより有効である可能性が高い

今回商業施設について考察するにあたり、注目したい項目は、施設全般・デパート、店舗の内装・設備、イベント、食料品(デパ地下)・限定商品の5項目です。上記の5項目は、商業施設・デパート独自の集客施策が反映されていると私は考えたため注目します。テナントは、商業施設というよりもテナント自体のブランドや独自性が強く、商業施設の比較・分析の際には、直接関与しないと考えたため重要視しません。重要視したい5つの項目はtwitterでは全体の約8割、Instagramでは約5割です。さらに、Instagramの特徴として、個人が楽しかったことや嬉しかったことといったポジティブな思考の投稿が多いことが挙げられますが、本分析では、メリット・デメリットを明確にしたいため、ネガティブな意見も重要になります。twitterは、ネガティブな意見もある程度あり、重要視したい項目の投稿もInstagramと比較してより充実しているため、本分析には適しているといえます。
後編では、伊勢丹新宿の他に、阪急梅田、ルミネ新宿、東京ソラマチについても本分析と同様に分類し、分類の構成が百貨店同士、百貨店と駅ビル、駅ビル同士でどれほど異なるのか(または差異はそれほどないのか)をみていきます。差異があった場合、それは売上と関連しているのか、考察します。

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