Amazon Goの衝撃とリテールの未来 第3回Next Retail Labフォーラム:長谷川秀樹氏 講演

2017年4月25日、D4DRが企画・運営に関わる「Next Retail Lab」フォーラムの第3回が開催されました。

Next Retail Labでは、オムニチャネル、EC等の分野で活躍されている著名な方々に、フェローとして参加いただいています。その中から今回は、株式会社東急ハンズ執行役員兼ハンズラボ株式会社代表取締役社長の長谷川秀樹さんが登場です。小売業が抱えている問題に対して常にチャレンジングな長谷川さんに、Amazon Goの視察も踏まえ、ITの視点から現在と今後のリテールについて、忌憚なく語っていただきました。

 

Amazon Goに行ってきた

Amazonが展開する実店舗Amazon Goは、シアトルにあるAmazon本社の1階にあります。ぱっと見は、アメリカにある普通の小売業形態です。お弁当やサンドイッチ、飲み物、スナックなどランチ需要を満たす品揃えで、お弁当は地元の業者に業務委託していますが、ナショナルブランド商品もあります。

お店に入るには、入り口のゲートに四つあるバーコードセンサーで、スマホアプリに表示されるバーコードをスキャンします。天井には、約1メートルおきにカメラとセンサー類が入っていると思われる黒い箱があり、棚にもセンサーが付いていると言われています。買いたい品物を持ってそのまま退店すると、数分でスマホに購入履歴が表示されます。

アプリの購買履歴表示には返金要求機能が付いているのですが、返品カウンターはありません。商品に不具合があった際には、返品してもらわなくても返金します。手元の商品は、購入者に処分してもらうのです。このような仕組みにしているのは、特定の人だけに集中して不具合が起こる確率は低いので、返品を繰り返す人は、出入禁止になるのではないかと思われます。

店員は入り口に3人ほど、ガードマン的役割の案内スタッフがいます。商品棚と商品をPDAでスキャンし、品出ししています。おそらく、リアルタイム在庫管理によって自動補充指示が出て、人間が補充しているのでしょう。

ビジネスの効果を考えると、お客さま側にとっては、レジ待ちをする必要がなくなり、レシートの管理も不要になります。企業側は、万引きによる商品ロスが低減します。また、キャッシャーがいない分の人件費低減は、営業利益率の改善につながります。

Amazon Goに対して、100人中95人くらいは、システム投資がかさんで厳しいのではないかと指摘する人もいますが、そうではありません。カメラなどは安くなっているうえに、一度投資すれば横展開できます。売り上げの0.5%以内のシステム投資であれば、導入価値はあります。

 

インターネットテクノロジーで構築するのが常識やて、ホンマ

東急ハンズの業務システムは、今年完全に自社開発になります。業務システムは、B to Cビジネスに近ければ近いほど、インターネットテクノロジーで構築しなければいけないと考えています。クライアントサーバ、クライアントOSに依存するシステム、ホスト、オフコンなどは、すぐやめましょう(笑)。

東急ハンズの場合は、クライアント側はGoogle ChromeとiOS、サーバはAWSを利用しています。AWS上で稼働しないソフトウェア、パッケージ、ミドルウェアなどは使用しません。ファイルサーバはGoogle ドライブを使っています。デバイスは、iPod touchやiPadのほうが、法人向け端末よりも安いうえに高性能です。

 

店舗スタッフにもインターネットは不可欠

お客さまが情報を得る手段は、インターネットが普及する前は、店舗スタッフからだけでした。しかし現在では、お客さまがメーカーと直接、しかも相互にインターネット上でやりとりが可能になっています。店舗スタッフもお客さまとメーカーがやりとりしている情報にアクセスできるようにしないと、店頭で対応できなくなります。

そこで東急ハンズでは、iPod touchを導入。小売業もインターネットを介し、情報をお客さまに届けているのです。業務端末ではこの流れに対応できないため、スマホアプリをビジネスに使うのです。POSもiPadで構築しました。

インターネット環境を整えたり、連携したりする仕組みを導入しなければいけない背景は、二つあります。一つは、SmartHRやマネーフォワードなど既存のクラウドサービスを使おうとなったときに、システム全体がインターネットになっていないと、そもそも利用できません。もう一つは、新たなサービスへの対応です。例えば、棚卸しや発注などの店頭業務を、東急ハンズのお客さまやファンをはじめとした従業員でない個人に隙間時間でやってもらえるといったサービスなども十分出てくる可能性があります。

これらに対応するためには、社内で業務用に特化した仕組みを利用していたらだめで、双方を同じ基盤にしておかないと、ついていけなくなります。APIのない企業とはつきあってはいけないくらいの勢いで、インターネットを利用したほうがいいです。

 

Amazon Goのコペルニクス的衝撃

Amazon Goは、衝撃でした。私が生きているうちに、商品を持って、出ていくだけの小売業ができるとは思っていませんでした。バーコードが動画になるのは分かっていましたが、POSレジに持っていってスキャンして持っていくと考えていて、そのまま商品を持っていくのはあり得ないと思っていました。テクノロジーの進化はすごい。

そうなると、現在の小売業が努力している方向は、正しいのでしょうか。商売でいちばん重要な情報は商品マスターだったはずなのに、ネット販売にした瞬間に、全部持っていかれます。仕入れ原価以外はバレバレです。立地と品揃えが大きな差別化要素でしたが、今後は何で差別化を図ればいいのでしょうか。

お金の掛け方も、考えなくてはなりません。たとえば、什器はPOSより高くなることがほとんどですが、それは本当に必要な投資でしょうか。

また、接客の方向性は正しいのでしょうか。昔は反対意見も多かったセルフレジも、今では普通に導入されています。ソリューション型接客は必要なのでしょうか。インターネットで調べてきている人たちに、どれだけ店員は勝てるのか。エモーショナルな接客はまだ残りそうな気もしますが、どこまでがお客さまの求めているものなのかとも思います。

ITをツールと考えていると人間の限界を超えられないので、システム構築の発想を逆転して、コンピューターが人間に作業指示を出すようなことを考える必要があります。いっそ、Amazon Goよろしく業務の塊ごと無人にし、全自動にします。そうすれば、人間はITを操作する必要すらなくなり、文句を言う人もいなくなるのです。

 


フェローによる議論の時間では、Next Retail Lab 座長の藤元健太郎が、Amazon GoではLog分析ができることから、データ活用にどのような可能性があるかという問いを立てました。フェローからは、店頭での買い物と、家での買い物との差別化を生み出すようなパーソナライズ化に有効だろうという意見がありました。また、Log分析を通じて需要に応じて価格を決める、ダイナミックプライシングも可能になってくるのではないかと言及するフェローもいりました。長谷川さんは、個人的にはLog分析に興味はないけれども、メーカーにとってはデータを活用できるのではないかと言います。

リアルの店舗スタッフが購買金額によって客への対応を変えることは今でも行われている中で、Logでとられたデータによってさらに対応を充実させることも可能かという質問も出ました。データは、お店に愛着を持って買い続けているお客さまに対し、その好意に応えたいという気持ちを実行するサポートになるという意見や、販売員の個性を履歴化し、相性の合うお客さまとマッチングすることもできるようになるだろうとの意見もありました。

リアルとEC、大手と中小、百貨店と専門店など、あまたの形態にあまたの視点から考えられる問題だけに議論は尽きず、改めてリテールの未来を考える難しさを感じた討論となりました。

 

 

 

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