マルチハビテーション(多拠点生活)は浸透するのか

「マルチハビテーション」とは、その名の通り、複数の場所に住むことである。別荘を持つ生活者や、定住しないでシェアハウスや宿泊施設を転々とする生活者、キャンピングカーのような車で、全国各地を渡り歩く生活者もマルチハビテートしている生活者である。別荘を持つ生活者は以前から富裕層に多くいた。しかし最近では、定住しないでシェアハウスや民泊などを転々とする生活者が増え始めている。このような新しい住スタイルは浸透していくのだろうか。そして、浸透した先にはどのようなライフスタイルの変化があるのだろうか。

地方移住推進から関係人口の増加へ

  国は近年、特に若者の地方移住を推進してきたが、なかなか進まなかった。地方移住が進まない理由は、人間関係や教育面、仕事面などが考えられる。以下は、若者の地方移住に関する調査結果である。

出典:「若者の移住」調査 【結果レポート】(一般社団法人 移住・交流推進機構)

この結果から、仕事関連・人間関係関連に半数弱が不安を抱いていることがわかる。これはどちらも1拠点に定住することへの不安が強いと言い換えられるのではないだろうか。
そこで国では、地方移住の推進から関係人口の増加に注力点をシフトしている。関係人口とは、移住でも観光でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる生活者人口である。

関係人口の概念では、地方への関わり方の選択肢が広がる。1拠点しかない移住と比べて、地方への関わり方のハードルが下がるのだ。地方移住を妨げている大きな要因への不安は、これで大幅に解消されるかもしれない。
そして、マルチハビテーションは、まさに関係人口の増加に大きく寄与するだろう。そのため総務省では今後、関係人口増加に、より一層注力するという話も聞こえてきている。
今後、マルチハビテーションは多くの生活者に受け入れられることが期待される。

マルチハビテーションが浸透した先にあるもの

 定住地を持たず、宿泊施設などを転々とする生活者が増えると、どのような社会変化が起きるのだろうか。
考えうる2つの変化を挙げる。
1つ目は、住民税の分散化である。現行の制度からの改変は、ハードルが高いことは確かである。しかし、10年後、20年後にマルチハビテーションが一般化すれば、住民税が分散化される可能性も高いのではないだろうか。特に、今でも問題視されている地方自治体の財政難は、この先も悪化していくことが予測される。それを解決するためにも、住民税の分散化は必要不可欠だと考える。また、生活者の動向把握も難しくなるだろう。制度が改変しても、どこに誰が住んでいるかを正確に把握できなければ、住民税の徴収は困難である。しかし、今後テクノロジーの進化により、生体認証や位置特定があらゆる場所・モノに取り入れられれば、生活者の動向を追うことは可能になっていくはずだ。
2つ目は、小学生や中学生の複数学校制である。例えば、1学期は、家族で東京のシェハウスに住んでいるから東京の小学校に、2学期は、札幌の民宿に住んでいるから札幌の小学校に、3学期は沖縄の民家に住んでいるから沖縄の小学校に通う、というような制度である。この制度は、今後数年でいくつかの離れた学校で実験的に行われ、その後、多くの学校に浸透していくのではないだろうか。

マルチハビテーションは浸透するのか

技術進化や価値観の変化、規制緩和など様々な要因が重なって、生活者のマルチハビテーション意欲は高まり、浸透していくだろう。それらの技術進化や価値観の変化は、『消費トレンド総覧2030』に詳細に記してあるので、ぜひ一度読んでいただきたい。また、ライフスタイルの変化に関するコンテンツにもマルチハビテーションの今後を洞察するために、必要不可欠な要素を挙げている。
これから更なる成長が見込める、マルチハビテーションとその周辺市場から、ますます目が離せない。

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Sho Sato

Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。

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