企業調査ブログ(第二回)事例紹介:新規参入のためのマーケット、企業ベンチマーク調査

2018年1月22日 | 企業調査・競合調査

前回はD4DRの企業調査の概要について書かせていただきました。今回からは実際にD4DRが行った企業調査の事例をご紹介いたします。

事例のご紹介ですのでデータはダミーであることをご了承ください。

事例1「新規参入のためのマーケット、企業ベンチマーク調査」

調査概要

【目的】

クライアント企業は、ある市場に新規参入を考えており、すでにその市場で成功を収めている企業(参入後は競合となる)の状況を把握したいと考えている。マーケット全体の現状と今後を占い、競合は如何に当該市場で勝ち抜き成功を収めたのか、その秘策を明確にし、自社の参入の方向性を判断するために調査を実施した。

【参入したい市場】

育児支援サービス

【調査対象】

大手企業、中堅企業、小規模の合計4社

【調査項目】

(1)企業の収益性

(2)育児支援サービスのセグメント収益性

(3)ターゲットとする顧客像と営業手法

  • どのように顧客ターゲットが存在するのか
  • 顧客ターゲット別セグメントはどのようなものなのか(構成比を含む)
  • ターゲットへのアプローチ方法とクロージング方法

(4)顧客クレームの種類と解決方法

(5)スタッフの採用、育成、処遇に対する考え方

(6)スタッフの採用、育成方法

(7)スタッフの実際の待遇例

(8)保育サービス・育児支援サービス市場の現状認識

(9)保育サービス・育児支援サービス市場の将来像

(10)保育サービス・育児支援サービス市場での自社の立ち位置と目指すべき姿

【調査期間】

約1か月

【調査手法】

A)調査対象企業本社、支社、教室などの施設に対するヒアリング

  • 本社=経営企画部のような部署を中心に営業部門、施設運営部門
  • 支社=エリアの営業担当者
  • 教室=教室長または施設長

B)調査対象企業と取引のある銀行や企業に対するヒアリング(いわゆる裏とり調査)

【調査費用<目安>】

150万円~

なお、企業調査は、Webや官公庁などのオープンデータの文献調査を実施したのち、当該企業等へのヒアリングを行います。そのため企業規模の大小にかかわらず1社あたりの調査費用はほぼ変わりません。

調査結果のご紹介

4社の調査を踏まえ、以下のような結論(一部抜粋)を導き出しました。

この結論を導出するために各社の前述の調査項目(10項目)をすべて明確にしました。

~まとめ:4社の見解~

【現状】

この4〜5年は育児支援サービスの売上高は年10%程度増加している。待機児童の解消に向けて民間サービスの需要が高まり、各社は保育施設を拡充していることが最大の要因と判断している。規制緩和も進み政策もあり、今後も新規参入が多くなりの市場の拡大が予想される。

ただし、市場の拡大を牽引しているのは、「保育所」「幼児教室」の施設型保育であり、ベビーシッターのような非施設型サービスは、横ばいからやや減少傾向にあると思われる。

施設型と非施設型のサービスは、基本トレードオフの関係なので、政府が保育所を拡充し待機児童を減らすというものであれば、非施設型サービスは縮小してもやむを得ないと判断している。

それに対抗するためには、既存型の「子守」のベビーシッターサービスから新しい付加価値を付ける必要があると思われている。例えばベビーシッター付き旅行企画や幼児・児童への早期教育(英語、数学、文字)、二十四時間派遣サービス、派遣ギフト券の発売などサービスの多様化、高度化されてきている。

これは、料金が高額のため需要の飛躍的な拡大が望めなく、キメ細かな高付加価値サービスを提供することで他社との差別化を図り、収益率を高めるしかベビーシッター業界で生き残っていけないという現実があるからである。

また、働く女性のニーズが強いことから、一部企業では企業内託児所の設置、ベビーシッターサービスの利用に対する補助制度を導入など子育て支援に前向きな企業も出現している。ゆえに、ベビーシッター会社の法人向け取引が登場、拡大の兆しをみせ始め、企業内託児所のコンサルティング業務や運営そのものを代行、会員企業社員の自宅へのベビーシッター派遣業務を行うことも主流となっている(A社など)。

 【当該市場の将来】

〇課題

今後の参入している企業の問題点は、企業内託児所のコンサルティング業務など法人向け取引が普及、浸透により、より厳しい要求に見合うだけのベビーシッターを質量とも派遣できるかどうかにつきる。

また、法人契約をできている企業とできていない企業の格差が一層拡大するものとみられる。

とりわけ、適任者不足にA社・B社・C社の3社は悩まされており、優秀なベビーシッターの確保と質的な向上がいま最も強く求められている。

しかし特殊技能が必要となるD社は、競合が少なく時給も高いため、比較的集めやすいとしている。

 

〇今後の当該市場

少子化が進むなか、ベビーシッター利用者は、全体で見ると「1990年代半ばから減少し、今は横ばい」(A社見解)というのが妥当なようである。そのためA社のような全国展開している大手業者に顧客が集中しているともいわれる(B社見解)。

企業や地方自治体との法人契約では、相当に受注額を切り下げていることも珍しくない(C社:××区と提携)としている。「年間で一千万円はかかるはずのところを、半額近くで落札するケースもある」(C社)「シッターの時給を削るのは難しいから、値引き分は業者が負担することになる。これでは体力がある企業しか残れない」(B社)。「法人契約は企業ステータスを上げるためと口コミの基を捕まえる手段」とA社は割り切っている。

「法人はともかく、個人からの受注で値下げは難しい」(A社)ので顧客満足のため「子守型」シッター部門は現状維持程度で、収益源は、幼児教室などの多角化となる。また今後シッターは塾や学校などへの送迎役が主たる仕事になると予測されているが、それを含めて生活の一部を担うハウスキーパー的ビジネスとなると思われる。

もしくは、D社のように語学教育など専門分野に特化させることで差別化し成功を図る戦略となる。

しかしD社の提供しているサービスは、顧客にとってもベビーシッターにとってもレベルが高いため、一部の特殊事業者のみが可能であろう。

とはいえ今後は「ハウスキーパー的総合サービス」と「専門分野特化ニッチサービス」の二極化になっていくと予想しており、知名度のある大手以外は、如何にニッチな土壌で付加価値をつけるかが、成功のカギであるとしている。

とはいえ、ニッチでの成功は、決して大幅に利益を獲得することができるようなビジネスではないことは、ニッチ市場を攻めているC社やD社の売上高推移などの財務情報から容易に判断できるであろう。

 

~各社別調査の結果抜粋~

各社別の調査結果の一部をご紹介します。

【各社の売上高内訳と解説】

≪A社≫

A社の場合、定額制の料金が他社との差別化となっている。

そのため売上高は、定額制が70%、定額制以外(スポット)が25%強、入会金などが5%弱となっている。客単価(入会金などを除く)は、以下の通りである。

 定 額 制=約100,000円/月額

 スポット制=10,000円程度が多い(原則1,500円/1hで算出)

また、スポット制の送迎業務は10~30%程度であるとコメントしている。

 

≪B社≫

B社の場合、年会費会員、スポット利用どちらからも利用手数料を徴収しているので他社と比較すると割高に感じられている。このような会費があるので、他社に比べ「入会金・年会費などの会費」売上高のシェアが高い傾向にある。

レギュラーとスポットの比率が拮抗しているのは、「年間××回までならスポットのほうがお得」というセールストークでスポットサービスに注力しているからである。

 

≪C社≫

送迎サービス(一律料金)は入会金を支払っているメンバーのみのサービスである。メンバーとビジターの違いは、サービスメニューの違いのほかに、依頼時間(メンバーは2時間から、ビジターは3時間から)と1時間あたりの単価が異なる。

なお客単価は以下の通りである。

ベビーシッター=2,500円/時間(1日平均××人の利用)

送迎サービス=3,000円/3時間(1日平均××人前後の利用)

 

≪D社≫

D社は、ベビーシッター事業が全体の95%を占め、またリピート利用が多いとしている。リピートの理由はバイリンガル人材がシッター業務を行っているためである(バイリンガルシッターと称する)。

バイリンガルシッターはベビーシッターというよりも家庭教師的役割が強いようであり、家庭教師は専属であると同じように、バイリンガルシッターも原則指名制で行っている。

また、他の業者がサービスメニューとして独立させている送迎サービスは、ベビーシッターのメニューに含まれていることが大きな特徴である。

 

【セグメント別顧客ターゲット像】

≪A社≫

≪B社≫

B社には、いわゆるターゲット像(このような顧客を狙う)というものはない(特殊な病後児・障害児シッターは除く)。ターゲット像を持たない理由は、ターゲットに合わせたサービスしかしなくなってしまうからとしている。しかし顧客の状況は把握しており、B社が把握している顧客は上記のとおりである。

≪C社≫

C社の基本的スタンスは「ご近所さんが面倒をみてあげる」というものなので、平均的な年収の家庭が多い。

 

≪D社≫

D社は、バイリンガルシッターが中心であり、費用も高いため、総じて中産階級以上の人たちがターゲットとなる。「お受験」「小学校入試」は当たり前の家庭が多い。

 

【実際のスタッフの教育手法】

≪A社≫

A社の人材ステップアップは「発掘」「育成」「活用」「登用」の4つのプログラムからなっている。

  1. 発掘=採用と初期育成
  2. 育成=中堅の育成
  3. 活用=マネージャーなど組織長の育成
  4. 登用=支店/エリア長・経営陣など経営幹部への育成

このプログラムは以下の人材理念に基づいて運営されている。

 「人材理念1:大局的な見通しを持って事業基盤の設計を行える人物」

 「人材理念2:将来を予測しながら事業の立案・推進を行える人物」

 

≪B社≫

B社で基本的な事から中級まで自社プログラムにて研修を行っている。研修はレベルに併せて以下の4コースある(希望者には病後児・障害児シッター向けの研修も実施している)。

≪C社とD社≫

C社、D社とも新スタッフ研修を自社では行っていない。全国保育サービス協会の「新任研修(3日間)」に派遣しスタッフ研修の変わりとしている。なお、研修費用は各社が負担している。

全国保育サービス協会の「新任研修」は、ほぼ毎月実施されているので、登録後しばらくは仕事に就けないと言ったことはない。

全国保育サービス協会の「新任研修」のカリキュラムは以下の通り(全国保育サービス協会HPから抜粋)である。

外国人の場合も同じ研修に参加させている(日本語が60%以上理解出来ることが採用の条件であるため、研修参加は問題無いとしている)。

第1回目の事例紹介は以上です。

次回は、「競合企業の今後の戦略を知り、自社で対応策を考えたい」という目的で調査した事例をご紹介いたします。

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